先日、教育移住をして7年になる友人に会うため、マレーシアのペナン島へ行ってきました。
行き帰りの飛行機の中で、私はペナンを舞台にした1冊の小説を読んでいました。
すると、現地で歩く街並みと物語の登場人物がリンクして、
ただ観光地を巡るのとは違う感覚で、どっぷりと街の空気に浸かることができたのです。
読書を絡めると、一度の旅行で何粒も美味しいと感じます。
せっかく時間とお金をかけて行く家族旅行や、教育移住の下見。
「ただの観光」で終わらせてしまうのは、少しもったいない気もします。
関連する「物語」や「歴史」の本を旅の前後に眺めるだけで、現地での見え方も、子どもの吸収力もまったく違ってくるからです。
この記事は、これからペナンを訪れるご家族のための「現地の解像度を上げる読書ガイド」です。
そして同時に、マレーシアから帰国した子どもたちや元・在住者の方が人生の一部を過ごした大事な場所とのつながりを保つためのリストでもあります。
旅行の準備として、あるいは帰国後の思い出として。
親の学び直しにも、子どもと一緒に読むのにもぴったりな8冊をご紹介します。
ペナンの解像度が劇的に上がる本8選
大人向けの小説から小さな子どもと一緒に楽しめる絵本まで、幅広いジャンルから8冊を選びました。
もちろん、全部を読む必要はまったくありません。
「うちの子は絵本からなら入りやすいかも」「親の私はこの小説が気になるな」など、ご自身の家庭にしっくりきそうなものを、まずは1〜2冊選んでみてくださいね。
①大人と中高生向け:歴史やアイデンティティに触れる
まずは、親御さん自身の学び直しや、中高生のお子さんにおすすめの3冊です。
ペナンがどうしてこんなに多文化な街になったのかという「歴史の背景」や、異なる文化の間で揺れる主人公の「アイデンティティ」に触れられる物語を集めました。
『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』(こまつあやこ)
マレーシアからの帰国生が主人公のヤングアダルト小説です。
タイトルの意味を調べると、マレー語で「5・7・5・7・7」、つまり短歌の音数律を意味しています。
日本とマレーシア、どちらの文化にも自分がいるという感覚を肯定できる一冊です。
帰国後の現実的な進路選びについては、こちらの記事も参考にしてみてください。
👉️【完全版】インターナショナルスクール生・帰国生のための日本の学校選び|おすすめ書籍&ウェブサイト集
『マラッカ海峡物語 ペナン島に見る多民族共生の歴史』(重松伸司)
ペナンがなぜ多文化都市になったのかを、通史的に把握できる一冊です。
マレー系、中華系、インド系、プラナカンなど、多様な人々がどのように共存してきたのかが分かります。
親が先に読んでおき、現地での街歩きで「ここはどんな人たちが行き交ってきた場所なんだろう?」と子どもと話す土台になります。
中高生の調べ学習にもおすすめです。
『The House of Doors』(Tan Twan Eng)
※こちらは洋書です。
1920年代のペナン島を舞台にした、大人向けの小説。
『月と六ペンス』などの名作で知られるイギリスの世界的作家、ウィリアム・サマセット・モーム。
彼のペナン滞在をめぐる史実とフィクションが交差しながら、一つの家に集う人々の秘密や葛藤が描かれます。
観光地としてだけではない、植民地時代の名残などペナンの複層的な背景を感じることができる一冊。
旅行前にあらすじや背景を知っておくだけでも現地の見え方がぐっと変わりますし、
高校生以上の本気の読書としてもおすすめの作品です。
②子どもと一緒に楽しむ:現地の空気やルーツを味わう
続いては、小さなお子さんから小学生くらいまで、親子で一緒に「視覚」から楽しめる4冊です。
難しい歴史のことはいったん横に置いておいて、
「ペナンってどんなところ?」
「どんな暮らしをして、どんなごはんを食べているの?」という現地の空気を直感的に味わえるものを選びました。
『カンポンボーイ』(ラット)
1950年代の素朴な村の暮らしを描いたコミックです。
旅行前にこれを読んでおくことで、ペナンのストリートアートや郊外の風景を見たときの解像度が一気に上がります。
ただの観光用のアートではなく、「あの村の暮らしの延長なんだな」と感じられるようになります。
ここから紹介する3冊は、英語の絵本です。
文字が少なくイラストがメインなので、英語に自信がなくても直感的に楽しめます。
色鮮やかな絵を眺めるだけでも現地の空気が伝わってきますし、親子でやさしい英語に触れるきっかけとしてもおすすめです。
『Boys Don’t Fry』(Kimberly Lee / Charlene Chua)
プラナカン文化やニョニャ料理が色鮮やかに描かれる絵本です。
ペナンでニョニャ料理店を訪れる前の視覚的な予習にぴったりです。
男の子はキッチンに立たないもの、という声がある中で、料理づくりを通して自信を育む少年の姿が描かれます。
『Nana, Nenek & Nina』(Liza Ferneyhough)
イギリスとマレーシアのそれぞれに祖母を持つ少女の絵本です。
生活や文化が違っていても、どちらの家にも共通のあたたかさがあることが描かれます。
移住を控える子どもに「どの国にいても、自分の大事な場所は消えない」という安心感を与えてくれます。
『Jimmy’s Shoes』(Patricia Tanumihardja / Derrick Desierto)
靴のブランドとしてよくお見かけするジミー・チュウがペナン出身だったのかと、私も驚きました。
ジミー・チュウの伝記絵本です。
ペナンの小さな家族工房から世界へ羽ばたき、プリンセス・ダイアナに愛用されるまでになる物語です。
旅行中に「この街から世界へ羽ばたいたんだ」と想像しながら歩く楽しさを味わえます。
③さらに世界を広げるためのハブ
最後は、ペナンの旅をきっかけに「もう少し違う国の文化にも触れてみたいな」「いつか留学もいいかもしれないな」と世界が広がったときのための、ガイドブック的な1冊です。
『多文化に出会うブックガイド』(世界とつながる子どもの本棚プロジェクト編)
ペナンという一つの経験をきっかけに、家庭の本棚を広げていくためのリソースです。
多文化と出会うプライベート図書館をつくる手がかりになります。
より広い視点で留学や移住に向けた本を探したい方は、こちらの記事も覗いてみてください。
物語を「テキスト・セット」にして旅に出よう
今回紹介した本は、ペナンをより立体的に旅するための「テキスト・セット(足場かけ)」の一例です。
前知識もなく、ただ美しい街並みや異国の空気を肌で感じる旅も、もちろん素敵。
でも、背景にある物語や歴史という「テキスト・セット」を添えて歩いてみると、現地での見え方や子どもの吸収力に、また違った深さが生まれます。
選んだ本(テキスト・セット)が違うと、同じ街を歩いていても、家族それぞれで見えている景色や感じ方がまったく違うでしょう。
歴史小説の複雑な背景に惹き込まれる親がいれば、文字よりも鮮やかな絵本から現地の空気を感じ取るのが得意な子どももいる。
「どんな本がスッと入りやすいか」を探り、組み合わせること自体も「子ども理解」であり「自分理解」になるということです。
そして何より、本を通じた旅の醍醐味は、現地に行く前の準備段階から始まり、帰ってきてからもずっと楽しめます。
旅行前に物語で想像を膨らませ、
現地で「これがあの景色か!」と空気を感じ、
帰国後に「あのとき歩いた街だね」と本を開いて思い出を語り合う。
ただの観光だったものが、時間軸を超えて何重にも深く楽しめる。
そんな少しお得で、一生モノの教育機会を、ぜひ楽しんでみてください。
物語で想像を膨らませたあとは、実際のペナンでのフードツアーや街歩きの様子を、ぜひこちらで覗いてみてください。
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