算数でつまずくってどういうこと?ーー『理系が得意な子の育て方』を読んで

家庭教育

算数は大事。

多くの大人はそう感じているのではないでしょうか。

でもその感覚は生まれつきのものではないはず。

きっと、大人になる過程のどこかで、算数の大事さを少しずつ刷り込まれていったのでしょうね。

最近、『理系が得意な子の育て方』という本を読みました。

著者は、『RISU算数』というタブレット型の教材や教育事業を展開しているRISU Japan 株式会社の代表である今木智隆さんです。

この本を読んで私が共感した部分、触発された部分について書いてみます。

『RISU算数』とは

小学校全学年向けの算数のタブレット教材です。出題や復習は完全に自動化され、数的概念の先取りや定着が期待できるので、忙しい共働き家庭にぴったりです。(参考:RISU算数/RISUきっずとは?

算数ってなんのためにやるの?

私は決して「理系」には育ちませんでしたが、算数が生活に大事なのはなんとなくわかります。

でもそれを子どもに簡潔に説明できるほどの自信はありません。

今木さんは子どもに算数の重要性を話すとき、このように答えてみるのを提案しています。

(算数とは)自分でちゃんと考える方法を身に付けるための基礎

今木智隆. 10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方. 文響社, 2019.

私もこれに同感です。

別の著者は、大人向けにこのように書いていました。

(算数は)人が自分を取り巻く世界を理詰めに認識していくもっとも基本的な方法を、体系立てたもの

谷口隆. 子どもの算数、なんでそうなる?. 岩波書店, 2021.

つまり算数は「自分でちゃんと考え」たり、「世界を理詰めに認識し」たりするための手段のひとつのようです。

ではなぜ「自分でちゃんと考え」たり、「世界を理詰めに認識し」たりしなくてはならないのでしょうか。

今木さんはその答えも書いています。

これから先、ますます生き方は多様化していくでしょう。そのときにどれだけの選択の幅を確保できるかーーそのための第一歩は、意外にも小学校の算数にあるように思います

今木智隆. 10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方. 文響社, 2019.

つまり、算数の基礎的な力をしかるべきときに身につけることが、こどもの将来の選択肢を広げることにつながるというのです。

つまり…

算数は将来の選択肢を広げてくれる!

この前提のもと「算数の基礎的な力の身につけ方」を示しているのが、この本です。

私と算数(数学)の話

ちょっと脱線しますが、私自身は高校までの算数・数学で大きくつまずいたことがないタイプの人間です。

算数が得意だったというよりも、指導者とカリキュラムに恵まれたのだと思います。

私は中学まではインター、高校はアメリカだったので、日本とは異なる数学教育を受けていました。

アメリカの高校時代は、計算機をガシガシ使い、計算力よりもひたすら式を立てる訓練をこなしていました。

使っていたのは、グラフを描けるこういう計算機⇓

日本で大学生になり、個別指導塾アルバイトの試験を受けたときに、この日米の算数の違いが初めてハードルとして表れました。

「つるかめ算ってなに!?」(いまだにわからない)

小学生でも知っているという算数用語に初めて出くわして、びっくりしました。

そこのバイトには不合格だったことは言うまでもありません。

大学からは数学を履修しなくなり、すっかり学問としての数学からは離れてしまいました。

仕事では日々数字を使いますが、ミスが怖いのでなるべく自分では計算しなくていいように自動化スキルばかりが上っていきます。

『理系が得意な子の育て方』の概要

『理系が得意な子の育て方』の感想に戻ります。

図書情報サイトのカーリルに記載されている紹介文はこのとおりです。

算数が苦手になるパターンを徹底的に分析し、 その発端となる「4問」を特定!(練習問題付き)

「親がバリバリの文系」でも、「算数、大好きな子」が育つ

算数は、小学校で学ぶ教科の中で、ただひとつ、 学習に必要な力(読解力・論理思考力・計算力・分析力・応用力……)を 「すべて」鍛えられる教科です。

だから、算数が得意になれば、国語も、理科も、社会も伸びる!

シリコンバレーの上層階級が続々取り入れている、新!算数学習法

https://calil.jp/book/4866511354

「算数は学習に必要な力をすべて鍛えられる」と書いてあり、なるほどと思いました。

大は小を兼ねる、そういうの大好きです。

この紹介文を読んで、期待が膨らみました。

「子どもが算数でつまずいている」とは

すでに書いたように、私は算数・数学で大きくつまずいた経験がなく、日本の算数教育を受けてきていません。

だからこそ、日本の小学校に通う子どもがつまずくポイントがよくわかりません。

(繰り返しますが、私がすごいのではなくて受けてきたカリキュラムや指導者がたまたま私に合っていたのだと思われます)

この本を読むことで「つまずき」の正体を知ろうと思いました。

今木さんいわく、算数のテストで90点を切ったら、充分にその内容を理解できているとはいえないそうです。

そして「どんな間違いにも、そこには必ず、何かしらの”理解不足”が潜んでいる」そうです。

確かにそうでしょうが、実は私には別の考え方もあります。

子どもの算数、なんでそうなる?』の著者、谷口さんの本を読んだときの私のメモからですが、「子どもは子どもなりに理路整然と考えている。一貫した考えや理由を持っている」という見方もあります。

子どもは子どもの宇宙を生きていて、それは通常、大人になってからだと引き戻せない世界。

私は子どもの”理解不足”に触れるとき、子どもの宇宙を少し味あわせていただいているという気持ちで踏み入れたいと思っています。大げさかもしれませんが。

でもどこかで、大人のルールと子どもの宇宙のすり合わせをしないといけない。

そんなことを考えつつ読んでいると、やはり「どうやって子どものつまずきを把握すればいいのか」という問いがつきまといます。

つまずきやすい算数の単元5つ

『理系が得意な子の育て方』によると、小学生がつまずきやすい算数の単元は5つに集約されます。

1.2~3桁の位(くらい)の理解

例えば、320と言う数は100が3つ、10が2つ、1が0個であるとわかっているということ。

2.図形の組立・立体の基礎

平面の図形と三次元の立体は、別々に学びますが概念はつながっています。

3.単位、目盛りの読み方

定規や計量カップを読めて、単位変換をすることですね。

4.文章題

こちらは後述します。

5.円と半径・直径の理解

高学年で円の面積や円周の計算で使う基礎知識です。

算数検定を使うといいらしい

つまずきやすいポイントはわかりました。

では、どうやってつまずいているかどうか確かめるのでしょうか。

テストの得点が9割以下だと怪しいということはすでに述べました。

テスト以外で子どもの進度と理解度を測るには、算数検定を活用するといいそうです。

算数検定の成績表には、単元別に正解・不正解が示されます。

つまり、算数検定を受験することで、単元ごとに子どもの得意・不得意が診断できるそうです。

我が家の小学生は現在2年生。

小2の算数を算数検定のレベルに換算すると10級に相当します。

10級の問題が9割以上解けていれば、小2までの単元の理解はできていると判断できるということですね。(合格基準とは違います)

『理系が得意な子の育て方』にも、つまずきがちな5つの単元の学年ごとの練習問題が入っています。(対象目安は2年生以降)

大人になってしまうと、何年生でなにを習ったかなんて忘れているでしょうし、単元の順番やくくりも変わっている可能性があるので、これはありがたいですね。

我が子(小2)の場合

ここまでを踏まえて、小2の長男の日々のテストや夏休みのドリルの出来を見直してみました。

すると、文章題と二桁の引き算で理解が追いついていないみたいです。

逆にdLやLなどの単位のような、つまずくのではと身構えていた単元はスムーズに習得していたのが印象的でした。

こんなふうに、この子「算数が苦手かも」ではなく、算数のなかでも「◯◯で理解が追いついていない」と分解していく。

さらに、単元のつながりを紐解いて、そのつながりのなかで順を追ってつぶしていく。

『理系が得意な子の育て方』が提案しているこの向き合い方はロジカルで好きです。

自己評価と他己評価の違い

長男はすでに「ぼく、算数苦手なんだよ」と口にしています。

でも私からすると、数的感覚は大丈夫そうに見えています。

この自己評価と他己評価の差はどこからくるのでしょうか。

私から見ると点数が取れていない理由は、答案をきれいに書けていなかったり、答案の単位(「##枚」の「枚」)が抜けていたり、指示を無視していたり(記号で答えるべきところを解で埋めていたり)するからです。

算数を間違えているというよりも、問題への答え方を間違えているんです。ここには違いがあると私は思います。

小2からしたら、判断がつかなくても無理はありません。

逆にいうと、算数ができているなら、あとは答え方のルールをできるようになれば、学校の算数は100点が取れるはず。

たとえばサッカーで、いくらキックやドリブルやパスの技術を覚えても、手を使わないとか、線の外に蹴らないとか、そういうルールを覚えないと点数にはつながりません。

算数で100点を取ることは、それとあまり変わらないと思います。(球技全般が苦手なので、たとえが的外れだったら教えて下さい)

子どもが点数を取れないとき、どこにその原因があるのか摘み取るのはまわりの大人の腕の見せどころだと思いました。

改めてわかったRISU算数の意義

繰り返しますが『理系が得意な子の育て方』の著者は算数教材を展開しているRISU Japanの代表さんです。

>>評判のタブレット教材『RISU算数』『RISUきっず』を小1&年中の兄弟がお試し体験【PR/クーポンあり】

我が家では以前RISUを試してみて、残念ながら子どもたちには合わなかったことがわかったのですが、この本を読んでみて改めてその意義や実現しようとしていることを感じました。

RISUは、子どものつまずきポイントを確認し、それに対応する仕組みができている点がすごいんです。

たとえばRISUでは、単元をとびとびではなく、つながりで学年を無視して連続的に学習するスタイルをとっています。

だから「1年生であっても、3年生の図形までスッとクリアしてしまう子もざらに」いるらしいです。

実際、RISUは先取りを促すわけではないけど、進めたければどんどん進められる仕組みになっています。

裏メッセージ

『理系が得意な子の育て方』では、「文章題」にまるまる1章割いていて、他の単元とは明らかに異なる特別扱いをしています。

文章題はいろんな単元で使われる問題形式だからそれだけ普遍的な問題ということもありますが、それだけ重視されている項目であり、強いメッセージ性を感じました。

どんなメッセージかというと、より速く、より多くの計算問題を解ける練習、つまり計算力偏重型の勉強(塾や教材や褒め言葉)には弊害がある、ということではないかと。

どんな弊害があるかというと、

1.計算力=算数力という思い込みが、計算ができる=算数が得意という思い込みを招く

2.反射的計算力を鍛えるだけでは、「問題を正しく理解する」「式を立てる」練習が疎かになる

3.「早い」子は目立ってもてはやされて、「早い」ことがいいことだと広まってしまう

4.じっくり読まないと解けない文章題は、「早く」解けないから嫌煙されて悪循環につながる

つまり計算力を鍛えることが悪なのではなく、それだけでは足りない、という話だと私は理解しました。

解答が速いことだけでなく、自分の力で正しい答えを導き出せていること。また、自分の力を信じて諦めないこと。

子どもが算数と向き合っているときに大人が見るべき・ほめるべきポイントや態度を誤ってはいけないと思いました。

文章題の重要性

『理系が得意な子の育て方』に書かれているように、「 文章をしっかり読む、その中で大切な数字やキーワードを見つける、と言う基礎」は、算数/数学に限らず、ほかの科目にも必要なスキルであり感覚です。

大人になっても役立つのは言うまでもありません。

文章問題は複合的なスキルを試す問題形式ですし、今後あらゆる試験からなくなることはないでしょう。

小学生のうちにたくさんつまずかせて、この基礎を身体に染み込ませることが大事だと思いました。

長い目で育てていきたいスキルです。

普段の生活や好きなものや得意なものなかでも数字の感覚を伸ばせないかどうか、考える余地はあります。

『理系が得意な子の育て方』にも少し事例が載っていますが、私も別記事で書いたように子どもが持っている8つの知能に合わせた形で導入してみるのもいいと思います。

>>「8つの知能」で子どもを理解する試み

まとめ

この記事では、私が『理系が得意な子の育て方』を読んで思ったことを書いてみました。

子どもが「好きなこと」をできるようになるために、選択肢を広げてくれるのが算数・数学。

その効果を最大にするためには算数のつまずきを把握し対応するのと併せて、子どもが好きなことを自覚していることも重要だと思いました。

好きなことを自分の力で探求・追求することが喜びにつながることを小さいうちから実感しつづけてほしいです。

>>子どもの好きなものをいくつ知っていますか?

RISUがその手段になるなら、どんどん活用していくべきです。子どもに合うかどうかは、使ってみないとわかりません。また、いつ試すかによっても変わります。

RISUをまだ試していないなら、我が家の実践例も参考に一度試してみてください。

我が家の実践例

RISUは専用の端末が与えられるので、2人で1台の家庭用タブレットを共有している兄弟にとっては、お互いにタイミングを邪魔されず、好都合でした。

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