「戦争報道を目にする子どもたち」に大人はどんな配慮ができるのか(学び編)

家庭教育

この記事は、前半の「心のケア編」と対になっています。

子どもとセンセーショナルなテーマを話題にするときは、心にも注意を払うべきだと思います。ぜひ併せてお読みください。

今、メディアはR国とU国の間の争いや、他国の動きについてのニュースで持ち切りです。

両国に直接的なつながりを感じていないとしても、同じ時代を生きている国際市民としては誰もが当事者であることは忘れたくないです。

この一連の記事を書くことにしたきっかけは、前編に書いております。

この記事では、今、起きていることを知り、考え、学びに活かすにはどういう術があるのか。

心理や政治や災害の専門家ではなくても、いち保護者として私が学んでいることを、今後のために書き留めております。

戦争、侵略、侵攻、紛争ーー立場によって争いの呼び名は変わると思います。私は呼び名を決めかねているので、この記事の本文(見出し以外)ではかなりジェネリックな「争い」という言葉を意図的に使うことにしています。

「戦争報道を目にする子どもたち」とどう学びにつなげるか

前編が「受けた心のケガ」への応急処置の話だとすると、ここからは「未来につなぐバトン」の話です。

今起きている事象をどう次世代に継承するのか。つまり、どう教育現場や子育てで活かすか(あるいは活かさないか)

正解はない問題ですが、実際の先生や教育機関がどのようなリアクションをしているのか、見てみたいと思います。

英語圏の教育現場では

まずは英語圏の先生方。

Larry Ferlazzoさんという教師の個人ブログでは、教育活動に使えるリンク集が随時更新されています↓

このブログでは教育現場や家庭で扱える他のテーマも網羅されていて、とても便利です。

今回に関していうと、たとえばこんなリソースを見つけました。

アメリカの名門私立ブラウン大学には、歴史・社会教育のコンテンツやカリキュラムを提供するChoices Programというプロジェクトがあります↓

昨今の争いについて理解や議論を深めるためのレッスンプランやプリントが掲載されています。

別のリンク集もご紹介します。

アメリカ・サンディエゴ郡の教育委員会のサイトにも参考になるリンクがまとめられていました。

たとえば、アメリカの名門私立スタンフォード大学ではCivic Online Reasoningというオンラインカリキュラムを無料公開しています。

「Civic Online Reasoning」は直訳しづらいのですが、「国際市民としての感覚を持ちながらネット情報を精査し、論理的に思考・判断する」という意味です。

直近の争いごとに限らず、感染症の状況など、国際・国内のあらゆるニュースを多面的に捉える姿勢は、現代のリテラシーのひとつとしてとても大事です。

英語圏の教材やカリキュラムは比較的探しやすいと感じています。Google以外にもTwinklやPinterestなどでこのようなキーワードとテーマと年齢をかけ合わせて検索してみてください。

英語で検索するときのキーワード
  • civics
  • inquiry
  • citizenship
  • media literacy
  • emotional learning/ responses/ regulation

別記事ですが小学生向け:英語教材との出会い方についても詳しく書いています。

日本の教育現場では

気になる記事がありました。学校や教委などのサポート・コンサルティング等をされている為田裕行さんのブログです。

題して「先生に訊きました:「ロシアのウクライナ侵攻について教室で話しましたか?」」。

直球の簡潔なアンケートです。

正式な調査ではなくても、38件もの先生方のナマの声を収集できているのが本当に貴重で素晴らしいと思いました。

先生といっても、その立場はそれぞれです。幼保〜大学、常勤・非常勤、担任・専任、管理者・一般、ベテラン・新任などなど。

「話をした」という先生の目的や生徒の反応を一部紹介します。

ロシア帝国時代の歴史からソ連、WW2、冷戦、と今に至るまでの流れを全て解説しました。
→拍手で終わりました!(中学校, 高校, 中高一貫校)

ウクライナの地政学的な意味、そして歴史的経緯を踏まえた経済からの授業を実施
→アメリカ、ヨーロッパの枠組みに対する挑戦であるという見方もあるという気づき(中学校, 高校)

「話をしたかったが、まだ話していない」という先生。

机上の勉強だけでなく、世界の情勢を体感しているうちに、五感で学んでほしい。こちらで答えを出すのではなく、何を感じるか、政治経済や国語、倫理や世界史の観点からも考えてほしい。自分や日本が、その影響をどう受けるのかも。(高校, 中高一貫校)

世界情勢について関心をもってほしい、ということを目的にする。話す内容については、未定。(中学校)

「話をする予定はない」という先生。

中学二年生を教えています。
①この事件の背景を理解するためには、冷戦やアメリカを代表とした西側の資本主義との対立、旧ソ連の東欧諸国とロシアの関係や世界で起こっている資源(に関する利権)の奪い合い問題など、複雑な事象の説明と理解が必要です。産業革命から資本主義、列強の強さと幕末の日本の対外関係の弱さの理由(歴史)や、世界のエネルギー資源(地理)を学習した中学二年生でもきちんと理解するのは難しいと考えています。
②それぞれの国の考えがある中で、事実を主観を入れずに話すことは難しく、また、この問題を人道的な意味合いからの批判で終わらせては生徒との話題にわざわざ出す意味がないと思います。個人的にはね、と個人の思いを話すことの大切さも理解しますが、普段から各国の政治や国際関係について生徒と話題に出していたならまだしも、突然この問題だけ授業でとりあげることに恣意と疑問を感じます。
③現在、クラスには各国にルーツを持つ生徒が少なからずいます。各国の政治的な問題を(適切な学びにつながる形ではなく)とりあげることで、その国への偏見や嫌悪の感情をかき立ててしまうことは偏った見方を生み出してしまうと思います。
④生徒から、「先生これってどうして?」と疑問を投げかけられて(教員への信頼の証だと思います)、背景を説明しつつ、各国の立場やそこで実際に命の危険のある一人一人の人々に思いを馳せ、自分の考えやできることを国の立場で、あるいは国を越えて考え、意見を出しあえる場が作れるのであれば、十分に時間を取って話して良い事実だと考えます。(中学校)

様々なお立場から、様々な意見があり、とても考えさせられました。

引用元の記事には、ここでは取り上げきっていない意見も載っていますのでぜひ見てみてください。

この回答やSNSを見ていて、学校や先生に丸投げしてはいけないとも思いました。

先生に任せられないという意味ではなくて、私に無視できない責任があるということです。

保護者として、そして大人の一員として、子どもに話せることは準備して話したい、子どもと一緒に考えたい、というのが私の意見です。

家庭でもできること

私には小2と年長の子どもがいます。そして、仕事の一部ではメンターとして小学生〜高校生の方と1対1で話す機会があります。

次世代の方々と日常的に話しているということで、どのようにバトンを引き継ぐのかを意識しています。

私は日本の教育を受けていないので当事者として語れませんが、日本の公民・歴史教育は、敗戦の流れを汲んだ平和教育に比重が置かれているのではないかと感じています。

確かに今の”平和”は過去からの経緯があって存在していることを認識し、それを維持していきたい気持ちは否定できません。

もっというと、現状が”平和”なのをいいことに、公民や歴史教科で学ぶことは受験に必要な知識やテクニックに比重が置かれていて「いかに平和を能動的に作っていくか」「いかに社会をよりよくしていくか」という大義に向けた研鑽は個人に任されているような気がしています。

それでやっていける社会。それはある意味”平和”であることの裏返しなので複雑ではあります。

まぁ、でも日常と非日常の境界はあってないように、均衡と平和が似て非なるように、私たちの”平和”な生活は常に変化とリスクにさらされています。

だからこそ、周りで起きていることには注意を向け、「自分だったらどうする」とシミュレーションをしたり、実際に行動を起こしてみたりすることが結局は自分や生活を守ることにつながるのだと思います。

子どもにもそうした自覚のタネを植えておきたいと、考えています。(あとは自分で育ててくれ)

そのヒントになるリンクをいくつかご紹介します。

日本の教育現場での実践

ぽつぽつと、教育現場での実践報告らしき記事が見えてきました。

ひとつめは、開発教育をすすめるNGO「DEAR」の理事であり埼玉県立中学校教員の松倉先生の実践報告。

中1生向けに、「少々悩みながらも「問いづくり」に着目」して「ウクライナ危機を題材として」授業をされた準備から実施内容までを記録されています。

中学の生徒さんたちが作成した「問い」も公開されていて、大変興味深いです。

次に、兵庫県尼崎市立小学校教員の山川先生による「NIE(Newspaper in Education=新聞を教材にした学習活動)」の振り返り記事です。

この記事自体はウクライナ・ロシア情勢に特化した内容ではありませんが、地元の神戸新聞の記者を招いて「ロシアのウクライナ侵攻を題材に、真偽入り交じった情報とどう向き合うかを考える授業」を実施したり、「ロシアによるウクライナ侵攻のニュースは、教員よりも先に児童の方が見つけていた」など、以前から児童がニュースを身近に感じているのがわかります。

NIE 教育に新聞を

上の尼崎市立小の事例でも書きましたが、NIEとはNewspaper in Educationの略で、新聞を教材にした学習活動を指します。

日本語公式サイトによるとNIEは1930年代にアメリカで始まって、日本には1985年に正式に提唱された経緯があるそうです。

OECD(経済協力開発機構)によると、子どもの読解力と新聞の閲読頻度には相関関係があるそうです。

ちなみに我が家でも、子ども新聞を活用しています。読解力が高いのかは知りませんが。

NIEのサイトには、学習用ワークシートや新聞を授業で活用するためのノウハウが掲載されています。

国内外の時事ネタを扱うときに使えそうな方法です。

メディア・リテラシー教材

新聞のほかにも家庭でも使いやすそうな、メディア・リテラシーに親しむための教材を集めてみました。

情報モラル教育・情報防災教育

LINEみらい財団のサイトでは、授業で使える教材を無償提供しています。

アメリカ発:デジタル・シティズンシップ動画(字幕版)

アメリカのCommon Sense Education財団が制作したデジタル・シチズンシップ教材がなんと全編翻訳されています。

この教材は、生徒児童が地域社会に参画したり生活のなかで賢い選択をするためのスキルを取り上げています。

プレイリストに飛ぶと、幼稚園から高3まで対象別の動画が37本あります。

幼児向け動画も字幕(音声は英語)なんですが、全部ひらがなになっている配慮が嬉しいです。

これは小学校5年生向け↓

中1生向け↓

この高3向け動画は学校銃撃事件を取り扱う↓

小6以上向けの動画は、どれも同年代の子がたくさん登場します。

親から子どもに教えるのって立場上、難しいことが多いと感じます。でも動画だと、子どもと同じ方向を向いて一緒に学ぶ立場を取れる。

子どもも親から教わるよりも、第三者から教わるほうが素直に受け取りやすいと私は考えています。

文科省発:情報化社会の新たな問題を考えるための動画集

実は文科省も動画集を作っています。動画の数はなんと69本。

この動画集では、どちらかというとネットの使いすぎやネット被害などの「消費者教育」や、ネットいじめやSNS利用などの「ネットマナーやコミュニケーション」に関する動画が多いようです。

さきほどのCommon Sense Educationとはちょっと焦点が違いますが、デジタル市民の基礎知識としてはいずれも大事です。

NHK発:国際理解に役立つ番組一覧

NHK for Schoolという動画サイトを知っていますか?NHKが制作している教育動画を閲覧できるサイトです。

今、起きている事象を理解したり思考したりするための背景や基礎知識が身につくはずです。

いずれも良質なコンテンツです。

絵本

家庭において一番扱いやすいと感じるのは、動画と絵本です。

ここでは国際情勢を理解したり、自分の考えを養うために役立ちそうな絵本をピックアップします。

すべてを紹介しきることはできませんが、ほかにもたくさんあります。ほかの絵本リストも載せておきます。

まとめ

世界でリアルタイムで起きている事象をどう捉えるのか。どう教育現場や家庭で活かすのか、あるいは活かさないのか。

英語圏と日本での扱われ方(とその発信内容)をピックアップしてみました。

すぐに全容を知ることは難しくても、個々の情報収集の一助になれば幸いです。

さて、ここからは個人的な意見です。

世界を見渡すと、常にどこかで誰かが争っています。

でも非暴力的な方法で無事防げている争いもきっとあると思います。暴力的な争いのようにニュースになることがないだけで。

世の中には、いろんな支援行為があります。

犠牲者への支援もあれば、「そもそも犠牲者を減らすために普段から動いているけど目立たない」支援行為もあります。

災害支援を例にするとイメージしやすいかもしれません。前者は、災害犠牲者の救出、医療、物資、食料、住居、復興などの支援。後者は、普段からの防災や減災への投資や教育。

日常の怪我を例にするともっとわかりやすいかもしれません。前者は、転倒して擦りむいた傷に当てる包帯やバンドエイドや治療。後者は、普段から転びにくくするための体作りや歩き方の見直し、段差をなくしたり手すりをつけたりする対策。

もちろんどちらも大事です。

今、目の前で困っている人がいたら、少しでも楽になってほしい。

でも次の犠牲者は自分かもしれません。自分の大事な人かもしれません。

もし「自分も貢献したい」と思うことがあるのなら、「すでに犠牲になった人」だけではなく「次の犠牲者をどうやって減らせるのか」という発想も一緒に持ち合わせてみませんか。

どうせならコトが起こってからできることだけでなく、コトが起きる前にできることをやってみませんか。考えてみませんか。

教育って、そのためにあるのではないかと思っています。

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